大泥棒の盗み

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三月二十三日の東京読物新聞は一面のトップの記事が快人二十面相なる大泥棒が大勢の警察官をケムにまき、新宿御苑美術館の有名な日本画をすり替えたことを述べていた。 新宿御苑警察署長バーコード禿頭がくりかえし、当時普及し始めた白黒のテレビで放映され、このことは陰口小五郎の歪んだ自尊心をおおいに満足させた。 調子にのった陰口小五郎は次は何かと標的をさがしていたところ大東京博物館に大切に保存してある明治天皇の晩餐会で使ったともいわれている金杯が無性に欲しくなった。 これは俺様のコレクションに相応しいと妄想している彼の頭には「頂く」ということ以外に迷いはなかった。 さっそくタイプライターで、この金杯を頂くとの予告状をつくり封書を警視総監とマスコミ各位に複数、新宿御苑警察署前のポストから投函した。
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