第1話 私、美味しいですよ?

1/2
前へ
/38ページ
次へ

第1話 私、美味しいですよ?

 広大な草原が広がるのどかな風景。  地面むき出しの道路には轍が刻まれでこぼこしている。  そこに王都へ向かう荷馬車がのんびりと走っていた。  荷台には色とりどりの野菜や果物。  木製の檻の中には私がいる。  路面の石に車輪が乗り上げ、がたんと突き上げた。  荷台の上で木製の檻が飛び跳ねた。 「ピキィー(痛い)!」  檻の中で羽ばたいて見たけれど無駄なあがきだった。  檻に身体が激突して、広げた羽から3枚の羽根が抜け落ちた。  私は思う。    どうせ人間に食われる運命ならば、あきらめよう。  でも痛いのは嫌。  できるだけ痛くないようにしてほしいと。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加