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市場に着くと、野菜を売っている店の前で止まった。
農夫のマーチンが店主と話し始めた。
値段交渉が成立し、野菜が荷台から降ろされた。
次に馬車は果物屋の前で止まった。
そして果物が降ろされた。
荷台に残っているのは私だけになった。
いよいよね。
私は高値で買われるだろう。
マーチンにはおいしいごはんをいっぱい食べさせてもらったから。
最期に恩返しをしなくちゃね。
馬車は肉屋の前で止まった。
肉屋の店主との商談が始まった。
肉屋の店主が私を覗きに来た。
太り過ぎだわこの人。
マーチンはがりがりなのに、なんでこの人は太っているの?
鳥の目から見ても人間の貧困の格差は問題だと思うの。
せめてマーチンに一時の恵みでもあげたいので、
「ピュピリピリピリィー(私美味しいですよー)!」
精一杯アピールしてみた。
うまく伝わったかしら。
肉屋の店主は三重顎に手を当てて首を捻ったわ。
「さあ、お前ともお別れだ――」
マーチンが檻をのぞき込んだ。
私は彼と目を合わす。
これが今生の別れなのね。
さようなら、マーチン。
嵐の日に軒下で凍えている私を助けてくれた人。
ヒナだった私をここまで育ててくれた人。
あなたは自分の食事を抜いてでも――
私のごはんは欠かさずくれた優しい人。
あなたに幸あらんことを――
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