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放課後、音ちゃんは美術部のため、1人で下校する。
お化け屋敷に決まった時、音ちゃんと目を合わせてげんなりしたのは言うまでもない。
票の割合としては、3分の2がお化け屋敷で、そんなにみんな、お化け屋敷をやりたいんだと驚いた。
季節は秋に近づき、太陽が沈むのも早くなった。
音ちゃんの部活が終わる時間は、だいぶ暗くなっているんじゃないのかな。
美術部は意外と人が多い。
だからたぶん、大丈夫だとは思うけど。
1人で帰る道は、いつもの道は、少し寂しい。
そう感じる秋の手前、夏の終わり。
初めての中学校での文化祭は、小学校よりは楽しいといいな、と思った。
「ただいま」
「おう、お帰り」
家にはお兄ちゃんがいた。
お兄ちゃんは3歳年上で、高校1年生だ。
「お兄ちゃん、早いね」
「ん、テスト週間だから」
「何日?」
「4日間」
「うわあ、長いね」
「でも早く帰れるし。てかそうでもないとやってらんね」
お兄ちゃんは居間のソファで横になって、両手でノートを持って見ていた。
お兄ちゃんは勉強が嫌いではないけど、テストでもなければやらないと言っていた。宿題も学校で終わらせてくるみたいで、お兄ちゃんが勉強をしている姿をあまり見たことがない。
「そういうお前は遅かったじゃん」
「うん。文化祭の話し合い」
「ああ、そんな時期。何やんの?」
お兄ちゃんは私と同じ中学校だったから、文化祭のことを知っている。お兄ちゃんのクラスはずっと喫茶店だった。
「お化け屋敷」
「うっわ、めんどくさいやつじゃん」
「お兄ちゃんもそう思う?」
「うん。準備とか、1番大変なやつ」
「だよね……」
暗幕とか、ライトとか、衣装も、係になった人は忙しいだろう。これから決められることだけど。
「どの係がいいかな」
「んー、お前手先不器用だし、細かい作業じゃないやつにしとけ。あ、幽霊役なら見に行ってやるよ」
「えー、それだけはやだなあ」
音ちゃんの話を聞いたこともあるけど、人を驚かすのは得意じゃない。それだけは避けよう。
「お兄ちゃんのところは文化祭これから?」
「ん、テスト週間終わったらすぐかな。忙しい時期だよ、やだなー」
私たち兄弟は基本のんびりするのが好きだから、忙しいと聞くとこっちまで気が滅入る。
「羽咲、おかえり。晩御飯できるわよ」
「はーい」
とりあえず、お母さんの作ってくれた美味しいご飯を食べてから考えよう。
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