1.私の瞳に映るあなたは

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翌日、登校すると、音ちゃんはやっぱり先に来ていた。私より遅く来ていたことはまだ、1度もない。 「音ちゃん、おはよう」 「おはよう」 音ちゃんは机に向かって何かをしていたので、振り返ってくれた。 「音ちゃん、何してるの?」 鞄を机の横にあるフックに掛けて、音ちゃんの正面に立つ。 音ちゃんの机の上には、スケッチブックが広げてあった。まだ真っ白だった。 「部活の宿題みたいなものかな。文化祭で部室に展示するものなんだけど、テーマが学校っていうだけで、あとは色を塗っても白黒でもいいの。何を書こうか迷ってるんだけど。羽咲、何かないかな」 「そんなに時間はないんだね。そうだな、どうせなら、文化祭までの間で見たものにしたらいいんじゃないかな?」 「……そうだね、それはいいかも。ありがとう、羽咲」 音ちゃんは微笑んで、右手に持っていた鉛筆を置いて、スケッチブックをしまった。きっと、今はいつも通りの風景だからだ。これから朝読書の時間が始まって、HRがあって、授業が始まる。それらはいつも通りの日常で。1日の最後の授業の時間が、文化祭の準備の時間だ。たぶん、その時間とか、それから放課後を使って描くんだろうな。 チャイムが鳴った。 朝読書で読んでいる本は、有名な作家さんのものだった。私はあまり読書をしないから、図書室に行くのもこの時間のためだけで、特に読みたい本もないので、いつも図書委員の人のおすすめを借りて読んでいる。といっても、図書委員の人に毎回聞くわけではなくて、そういうコーナーが図書室に設置されているので、その中から選んでいるのだ。だから、図書委員の誰が選んでいるのかまでは知らないわけで。 今日も昼休みに1冊、借りに来たんだけど、今日はいつもより面白そうなタイトルが多くて、少し迷っている。 音ちゃんは部室に用があるとかで、今日は1人で選びに来たので、相談する相手もいない。どうしようかな。 学園ミステリーと、恋愛と、動物と、冒険と。 いつもタイトルでこれだと思ったものを借りるので、どんなものでもいいんだけど、それがなおさら悩ませた。 1人でそのコーナーの前でじっとしていると、ねえ、と後ろから声を掛けられた。 「そこの君」 「……私?ですか?」 振り向くと、うんと頷く男子がいて、本選ぶの悩んでるんだったらこれおすすめだよと言って、私の目の前に動物が表紙に描かれているものを置いていった。
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