師走のクリスマス

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「おい! 絶対おちょくってるだろ! 大人をからかうんじゃない!」  そう言って先生は出席簿で私の頭を軽く叩く。   「ごめんなさぁい。ぷ……ぷ……あはははっ! なんか笑ったら受験の不安とか吹っ飛んじゃった」   「おっ? なんだなんだ? 受験生がお悩みですな。先生が聞いてあげましょうぞ」  ほら、もう私の事に一生懸命になって、自分が急いでる用事を後回しにしてる。  でも、今日はクリスマスイブだから、もう少しだけ先生の優しさに甘えさせてください。 「はぁ。最近うちの父親がね『良い大学入らないと幸せになれない』って脅してくるんだぁ。言いたいことは分かるけどプレッシャーが凄すぎて……」 「なるほどなぁ。確かにお父さんの言うように良い大学に入って選択肢を広げることは大事なことの一つだと思う。けどな個人的には『幸せの定義や条件に決まったものはない』って考えてるぞ。  だってさぁ、俺たちはみんな別々の人間で考え方や価値観もそれぞれ違うだろ? だから水嶋の幸せが親御さんの幸せや俺の幸せと同じ必要はないんだよ。やり甲斐のある仕事について周囲に認められるのも、ひたすら趣味に打ち込むのもいい。結婚して家庭を持って、家族で楽しく過ごすのだって、どれも本人が生き甲斐を感じ、幸せだと思えるならそれでいいんだと思う。  その為に18~25くらいの時は色々な事にチャレンジして全力で楽しんで視野を広げたらいいのかなって思うよ。だからどんな学校に行ったって、どんな失敗をしたって幸せになれないなんて事は絶対にない!」  なんでだろう。先生の一生懸命に話してくれた言葉達が胸に引っ掛かっていたものを綺麗に流してくれる。  溢れそうな涙をグッと堪えて笑顔を作る。 「先生。ありがとう」
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