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僕の家にお風呂が作られたのは、僕が小学校一年生の時だ。
それまで、僕たち家族は隣にある“お風呂屋さん” に通っていた。
当時、僕の家は商店を営んでいたから、お風呂屋さんでの交流は、町内会や商店街の付き合いには欠かすことのできない社交場だったに違いない。
けれども、大事な社交場を無くしてでも「家にお風呂がある」という“たしなみ”は、現代人として必要だったのだろう。
ある日、父が家族を集めてこう言った。
「うちに風呂を作るぞ!」と。
とはいえ。
僕の家は商店街の並びにある、昔ながらの小さな花屋だ。
1階は花屋と配達の車を置くガレージになっていて、2階には両親、姉2人そして僕の5人が住んでいた。
はっきり言って、風呂場を作るようなスペースなどない。
しかし、父は全員を見渡して宣言した。
「1階のガレージを風呂場にする」
「えぇ! お父さん、配達用の軽トラはどうするの?」
「それなら心配いらない。もう駐車場を見つけてある」
と、こんなやり取りが父と母の間で行われていた。
僕は『家に風呂ができる』と、単純にはしゃいでいたけど、わざわざ別に駐車場を借りてまで、風呂場を作るとは……
父の風呂へのこだわりの強さを今更ながらひしひしと感じる。
そんなわけで。
僕たちの風呂は、左隣りにあったお風呂屋さんから、右隣のガレージへと変わった。
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