風呂のある生活

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姉たちとお風呂に入るたびに、石鹸をタオルで包んで息を吹きかけると泡が湧き出るとか、手で作った水鉄砲で、どこまで飛ばせるか、とか。 水中メガネをかけて、お湯の中を覗くとか。 あぁ、ふちに立って飛び込んだこともあったっけ。 こんな風に僕は、『お風呂やさんでは、絶対にやってはいけないこと』を家のお風呂でやり尽くした。 だから、毎回ドアを勢いよく開けた母に怒られるのだけど、自分ちのお風呂だからそれもまた楽しかった。 しかし時が流れて、一番上の姉が一人で入るようになり、次の姉もそれに続くと、僕は一人で風呂に入るようになった。 父とも時々は一緒に入ったが、いつしか『風呂は一人になれるプライベート空間』へと変わっていった。 中学生の頃は、失恋して湯船に顔を突っ込み、湯の中で泣いた。 また年ごろになると、当時流行っていた歌をカラオケで披露すべく、風呂の中で『ひとりカラオケ』よろしく、いい調子で練習に励んだ。 それから何より、女兄弟の僕にとっては、一人でアレを勤しむには風呂場は何かと便利な場所で…… んー、まあその辺のことは、思春期を経験した男性諸君なら一様に頷いてもらえると思う……、なっ? そんなわけで。 ガレージにある一風変わった風呂場は、僕のあらゆる想いやら、汗と涙と何とかやらが湯の中に溶け込み、時に溢れ出ていた。
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