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少年
カツカツカツカツ。
少年の足音が夜の闇に響く。
何気なく見返って彼の顔を見た者たちは、慌てて近くの酒場へ逃げ込んだ。
適当な逃げ場所が見付からない者は、彼の怒りに触れないように、慌てて視線を逸らし、だが意識は外すことができない。
その形相が特に恐ろしいわけではない。
ただ、彼の機嫌を損ねることを恐れた。
彼のうつくしい眉根がこれ以上寄せられぬように。
息をひそめてやり過ごす。
そんな大人たちを気に留める様子もなく、少年は不機嫌に歩き続け、ある瞬間、立ち止まって後ろを振り返った。
そうして、もと来た道を駆け戻る。
緊張状態にあった周囲の者たちは、ほっと息を吐いて、自分と同様の反応を認めると、へらりと笑い合った。
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