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「うわー、泡だらけ!」  お風呂場に入って来た千紘が嬉しそうに笑ったから、女の子もつられてまた笑った。  片頬にえくぼが出来る、とても可愛らしい笑顔だった。  綺麗にシャワーで流すと、あのボロボロだった薄汚れた子どもはどこにもいなくなって、ピカピカになった女の子が湯船に浸かった。 「ねえねえ、水鉄砲できる?」  シャワーで軽く体を流した千紘が湯船に入ると、両手で鉄砲の形を作って女の子に向かってお風呂のお湯を飛ばした。  その途端、女の子がポロポロと涙を流しはじめた。 「あ、ごめんね! 嫌だった?」  驚いた千紘がおろおろとしたけれど、女の子は首を横に振って「ううん、ううん」と何度も言った。 「お風呂って気持ちがいいね……」  泣きながら女の子はそう言った。 「あたし、大好きだったの。お風呂」  そう言って、また泣き出した。    大好きだったけれど、ずっと何らかの理由で入れなかったんだろう……。  そう思うと、昔の自分と重なって胸が痛んで泣きそうになった。 「お花のいい香りがする……」  ああ、あの頃の私と同じことを想ったんだな……。  この子も、このお風呂で生き返れたと思えたならいい。
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