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 女の子は春花(はるか)と名乗った。  小柄だけれど、10歳だと。  ドライヤーで乾かすと、その髪の切り方がギザギザで、きちんと切られていないことが分かった。  大きな傷は見られなかったけれど、身体のところどころに煙草を押し付けたような跡があった。  私と兄は放置されたネグレクトだったけれど、この子は虐待を受けていたのかもしれない……。  そして、苗字と家の場所は頑なに言わなかった。 「家に連絡できないなら、児童相談所に連絡するよ」  私の言葉に、春花は驚いたように目を見開いて私を見た。 「警察じゃないの?」 「……警察がいい?」  警察は嫌なのかと思って児童相談所と言ったのだけど、もしかしてこの子は何かの事件の被害に遭っているのだろうか……?  少し心配になったけれど、春花は勢いよく首を横に振った。 「警察に連絡されたら……困るの」  きっと、恐い目に遭うと思っているのだろう……。 「大丈夫。児童相談所に連絡したら、お家に帰らなくて良くなると思うよ」 「ここに居られるの?」  春花の顔がパッと明るく輝いたから、私は焦って「ここは無理」と咄嗟に否定した。  すると、春花が哀しそうに微笑んで頷いた。
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