プロローグ

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「ママ―、ママ―! あのね、ついて来ちゃったの!」  私がリビングでのんびりとテレビを観ていると、千紘(ちひろ)の声が玄関から響いた。  小学校に上がったばかりの、ピッカピカの1年生の千紘。  ようやく親から離れて1人で出歩くことを許されて、放課後はいつも友達と約束して公園へ遊びに行く。  千紘のこの「ついて来ちゃったの」は何度目だろう……?  首輪の付いた迷子の仔犬や捨て猫を、どこからともなく拾ってくる。  またか、とウンザリして、「元の所に戻してきなさい」と怒るために目を吊り上げて玄関に出た。  だけど、嬉しそうな千紘の後ろにいたのは、千紘より少しだけ背の高い男の子だった。  と言っても明らかに学校のお友達と呼ぶにはおかしな風貌で……。  髪はボサボサで何日も洗っていないのが分かる。  洋服も厚手の長袖シャツは汚れが目立たないグレーだけど、襟元や袖口が黒ずんでいるし、ウエストがゆるゆるで裾も長すぎるデニムのパンツを見ても、どう考えても何日も着替えていない。  肌にも垢が溜まっていて、その独特の異臭が鼻につくけれど、外で過ごしているにしては泥汚れは見当たらない。
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