18人が本棚に入れています
本棚に追加
「キミ、お名前は?」
私が屈んでその子の顔を覗き込むと、俯いていた男の子は余計に下を向いてしまった。
「お家はどこかな?」
恐がらせないように出来るだけ優しく語りかけると、男の子は下を向いたまま首を横に振った。
「お家、ないの?」
また首を横に振る。
「帰りたくないの?」
少しの間静止した後、男の子は小さく頷いた。
これは「元の所に返してきなさい」と千紘を怒るわけにはいかないな……。
私は小さくため息をついて、「とりあえず上がって」と男の子と千紘に靴を脱ぐように促した。
と同時に、自分の子ども時代を思い出していた。
最初のコメントを投稿しよう!