プロローグ

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「キミ、お名前は?」  私が屈んでその子の顔を覗き込むと、俯いていた男の子は余計に下を向いてしまった。 「お家はどこかな?」  恐がらせないように出来るだけ優しく語りかけると、男の子は下を向いたまま首を横に振った。 「お家、ないの?」  また首を横に振る。 「帰りたくないの?」  少しの間静止した後、男の子は小さく頷いた。    これは「元の所に返してきなさい」と千紘を怒るわけにはいかないな……。  私は小さくため息をついて、「とりあえず上がって」と男の子と千紘に靴を脱ぐように促した。  と同時に、自分の子ども時代を思い出していた。
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