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「最後にご飯を食べたのは、いつ? 何を食べた?」
私は冷蔵庫の中からペットボトルのスポーツドリンクを出しながら、リビングのドアの前で所在なげに立っている男の子に聞いた。
「……昨日の……昼。パン1つだけ……」
思ったよりも、可愛らしい高い声が返って来た。
「家で食べたの?」
グラスに入れたスポーツドリンクをダイニングテーブルの上に置いて手招きをすると、男の子は小さく頷いたけれど、その場を動かずに立ち尽くしていた。
標準身長の千紘より少し背の高い男の子は、就学前の子どもとは思えなかった。
何日も学校へ行っていないということは予想できた。
昨日も平日で給食を食べに行けたのに、もうそんな段階じゃないくらい汚くなってしまって、とても登校できなくなっているのだろう。
兄もそうだったから。
兄が学校へ行かなくなったのは、同級生に変な目で見られたくなかったからだ……。
「ママ、先にお風呂に入れてあげたら?」
千紘がダイニングの椅子に座って、スポーツドリンクを飲みに来ない男の子を心配そうに振り返った。
「あの子がこれを飲んで、今からチャチャっと作っちゃう雑炊を食べてからね。じゃ、千紘がお風呂の準備してきて」
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