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時折り、兄が「そのうち誰か来るから」と声を掛けてきた。
そして、私の手首を取って脈拍を確認すると、また手を離す。
後に兄が言ったのは、人を呼びに行きたかったけれど、人前に出られるような姿じゃなくなっていたから恥ずかしくて外に出られなかった、ということだった。
だけど、私がどんどん弱っていって、死んでしまったらどうしよう、と考えていたということ……。
当時はもう小学校の高学年になっていた兄。
生きる欲望よりも、羞恥心の方が勝ってしまって、もう生きることを諦めていたのかもしれない。
だけど、幼い妹を想う気持ちは大きくて。
「お兄ちゃん、あたし達、死んじゃうの……?」
力が出なくなって、兄も喋らなくなって、そう聞いたのは覚えている。
そして兄が「大丈夫だ」と言って、涙を流しながらゆっくり起き上がり、玄関のドアを開けると、眩しい光が部屋の中に差し込んできた。そして、そのまま兄が倒れる姿が朦朧とする意識の中で見えた気がした……。
次に気が付いた時、私は病院のベッドの上にいた。
綺麗に拭かれていた腕には点滴が刺さっていて、力が出なくて動けなかった身体は少しだけ元気になっていたのが分かった。
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