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「せっかく再会できたのに全然連絡くれなくて、やっと今日会えて…今、めちゃくちゃ嬉しくて」
塚越はいつのまにか、涙声になっている。
泣き落としはずるい、と思う気持ちと、そんなに俺のことを…と思う気持ちが同時に湧いた。
既にむずむずきている下半身を意識しながら、俺は訊いた。
「なんで、翔とかじゃなくて俺だったの?」
たしかに中3の頃の俺は飛ぶ鳥を落とす勢いでモテたけれど、何年も誰かの心に残るような魅力があったとは到底思えなかった。
「理由なんてなきゃだめ?」
塚越は涙目のまま、梅酒のグラスの縁を指でなぞった。
「蒔田くんが葛原さんを好きなことに、理由なんてある?」
俺は黙った。
「このひとって思ったら、もうそのひとじゃなきゃだめなんだよ。15歳でも25歳でも同じ。人のものでもフリーでも同じ。あたしは蒔田くんと、もっと…触れ合いたいよ」
切々と畳みかけるように言葉を継ぐ塚越は、今まででいちばんかわいく見えた。
「…セーフなんじゃね?」
俺は言った。その声はまるで自分のものじゃないように響いた。
塚越が、ぱっと顔を上げる。
未散の顔が一瞬、脳裏に浮かんで消えた。
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