第1章 夫婦のルール

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「せっかく再会できたのに全然連絡くれなくて、やっと今日会えて…今、めちゃくちゃ嬉しくて」 塚越はいつのまにか、涙声になっている。 泣き落としはずるい、と思う気持ちと、そんなに俺のことを…と思う気持ちが同時に湧いた。 既にむずむずきている下半身を意識しながら、俺は訊いた。 「なんで、(かける)とかじゃなくて俺だったの?」 たしかに中3の頃の俺は飛ぶ鳥を落とす勢いでモテたけれど、何年も誰かの心に残るような魅力があったとは到底思えなかった。 「理由なんてなきゃだめ?」 塚越は涙目のまま、梅酒のグラスの縁を指でなぞった。 「蒔田くんが葛原さんを好きなことに、理由なんてある?」 俺は黙った。 「このひとって思ったら、もうそのひとじゃなきゃだめなんだよ。15歳でも25歳でも同じ。人のものでもフリーでも同じ。あたしは蒔田くんと、もっと…触れ合いたいよ」 切々と畳みかけるように言葉を継ぐ塚越は、今まででいちばんかわいく見えた。 「…セーフなんじゃね?」 俺は言った。その声はまるで自分のものじゃないように響いた。 塚越が、ぱっと顔を上げる。 未散の顔が一瞬、脳裏に浮かんで消えた。
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