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電話はまたしても切られた。
ソファーの上で脱力したまま、俺は未散の言葉を反芻した。
今頃、誰かと一緒にいる未散。
その美しい顔を歪めて、その美しい身体を誰かに抱かれているかもしれない未散。
俺のものなのに。
未散は、俺の一部なのに。
気が狂いそうな嫉妬を覚えながらも、俺は平静を取り戻そうとしていた。
今の電話は、ふたりとも最初の電話より落ち着いて話せた。結婚を目前にして、距離が縮まったような気すらした。
話の内容は衝撃的ではあったが、その口調の端々に俺への気持ちが感じられるような気もした。
そもそも俺を嫌いになったわけじゃなく、俺の隣りにいる資格がないと、彼女は泣いていたのだ。
だから、きっとどこかにこの状況を打破するための活路があるはず。
俺は必死で思考をめぐらせた。
普段、超常現象とかUFOとか、オカルト的な話はいっさい信じない俺だが、オコノギ氏についての話は腑に落ちた。
突然「もしかしてあんた今、他の女いる?」とずばりと図星を指されたときの、あの揺るぎない確信に満ちた感じ。
奴が未散のことも言い当てているのなら、それは疑いようのない気がした。
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