第1章 夫婦のルール

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恋愛体質、か。俺は深い深い溜息をついた。 未散がモテるのは今に始まったことじゃない。 問題は未散の方も本気で愛してしまうことだ。 つまるところ、それを許せるか許せないかになってくるのだろう。 俺自身の器が試されている気がした。 急に空腹を意識した。食欲があるわけではないが、何か食べないと脳が働かない。 何も作る気がしなくて、俺は食器棚の周辺を漁った。 ブラック企業時代に買ったと思われるカップラーメンが出てきた。引越し前の部屋から運ばれてきたのかと考えると健気(けなげ)に思えた。 賞味期限は年末で切れていたが、俺は気にせず湯を沸かした。 そうだよ、一緒にこんなもん食いながら苦難を乗り越えてきたじゃねーかよ。 どぼどぼと湯を注ぎ入れ、キッチンタイマーを3分にセットしながら、今朝家を出て行く前の輝くばかりに美しい未散を思いだした。 どんなやつと一緒にいるのか知らないが、今頃めかしこんでおしゃれな食事でもしているのかもしれないが、そいつとカップラーメン食えるのかよ。 ずるずると麺をすすりながら、だんだん腹が立ってきた。 いや、落ち着け。 落ち着け、俺。
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