第1章 夫婦のルール

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わびしい食事をさっさと済ませ、俺は翔に電話をかけてみた。 いったん第三者的立場からの意見を聞くだけ聞いてみようと思ったのだ。 出ないので切ろうとしたら、8コール目くらいで翔の声がした。 「よう、紘央ちゃん」 テンションがおかしい。賑やかな雑音が聞こえてくる。 「おう、なにおまえ、酔ってんの?」 「酔ってまーす。酔ってますよお」 「どこ? 今話せんの?」 「編集者の交流会的なアレで、居酒屋的なとこ。話せますよお」 いいなあ。飲みたくなった。べろべろに飲んだくれて、すべてを忘れたい。 でも今夜は素面(しらふ)でいるべきだと思っていた。 「あのな、俺今、未散にふられそうなんだ」 「……え」 酔いがすっと冷める音が聞こえてきそうなほど、翔はいきなりまじなトーンになった。 「なんで? 入籍、2月とか言ってなかったっけ? もう来月じゃん」 「そう、だからピンチなんだよ。助けてよ、親友くん」 「親友ですけどもね…え、なんで? まじで」 「未散に好きな相手ができた」 翔が絶句した。 「……え、おまえの浮気じゃなくて? 葛原が?」 「そう。今夜は帰らないって宣言された」 「……」
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