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「まあ、あの……実はさ、俺の方も浮気したんだけどさ」
「そうなんだ」
「そこは驚かねーのかよ」
「……や、まあ、うん」
「だからさ、強く怒るわけにもいかなくてさ。気持ちがわからないでもないから」
「うーん……葛原がなあ……」
「聞いてる? まあいいや。問題はさ、未散は本気なんだとさ。結婚指輪も受け取れないっつーんだよ、オーダーしてたのが今日、入荷連絡あったのに」
俺たちの左手薬指にはめられることがないかもしれない指輪のことを思うと、少し泣けてきた。
「前、おまえに言われた通りだな。未散とセックスしたい男はいっぱいいるって」
「……泣いてんの?」
「ちょっとね」
「そっか」
「……結構、辛い」
「そりゃそうだ」
翔は静かな場所に移動したらしい。先刻よりも声がクリアに聞こえた。
「別れたら?」
「え」
「別れたらいいじゃん、思いきって」
そう来るとはまったく予期していなかった俺は意表を突かれた。
「覚悟がなきゃ付き合えねーよ、葛原となんか。仮に今、諦めさせたとしたって、これからもそういうことあるに決まってんじゃん」
翔はきっぱりと言い放った。
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