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翔はやっぱり酔っているのかもしれないが、言っていることは間違っていないと思った。
いちいち傷つくのが嫌なら、きっと未散を妻になんてできない。生半可な覚悟で一生添い遂げることなどできない。
別れるか、すべて受け入れるか、二択なのだ。
「……俺、別れるっつー選択肢はまるきりなかったわ」
「そうだろうね。ベタ惚れだもんね」
「うん、ベタ惚れなんだ」
認めて口に出すと、どこかすっきりした。
未散のことを古女房だなんて、いつか虚勢を張ったっけな。青かったな、俺。
「あ、呼ばれてる」
翔が慌てた口調で言った。
「悪い、かけ直すから」
「いや、いいよ。参考になりました、ありがとう」
「あのさ、絶対どうなったか教えてよ。な」
「はいはい」
「絶対教えろよな。ふられたら、俺がキャバクラ連れてってやるから安心しろ」
「はいはい」
名残惜しそうに、翔は通話を切った。
シャワーを浴びながら、あーーーーーーーーーーーーー――! と絶叫した。
自分も塚越とさんざん浮気しただけに、未散が他の男に抱かれる生々しい想像もいくらかはできてしまうのだ。
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