第1章 夫婦のルール

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「好きだよ、未散」 指先が繊細に動いて、わたしを刺激する。 泡立つ湯の中で、その手が揺らめいて見える。 「あ……あの……っ」 このひとはきっと、本能的にわたしの攻め方を知っている。 「あん……っ」 「ああ、だめだ、俺がもう」 深町さんはわたしの身体を自分の方に向き直らせ、正面から抱きしめた。 ああ、わたしもだめ。 紘央がひとりで苦しんでいるかもしれないのに、最低。 最低。最低。最低。 本当に、結婚なんかする資格ない。 紘央を傷つけたくない。 湯舟の背にわたしを押しつけながら、深町さんはキスを繰り返した。 片手で頭を抱えて顔を上向かせ、舌を絡ませ、そうしながらも胸を揉み、腰を抱き、性器を刺激する。 こんなの……こんなの、感じずにいられない。 わたしの漏らす声が、バスルームに淡く反響する。 「ごめん……、着けてないけど」 あ。 避妊のことを言っている。 わたしは去年の誕生日に合わせてピルを処方してもらったのをきっかけに、身体のリズムを保つためにずっと低容量ピルを飲み続けていた。 今は妊娠はしない。 いいよ、とささやいた次の瞬間、片脚が持ち上げられ、深町さんの身体がむにゅりとわたしの中に入りこんだ。
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