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「謝らなくていいから、聞いて」
紘央は言った。その声はいつになく凛としていた。
「聞いて、未散。俺、おまえが好きだ。愛してる。ベタ惚れなんだ」
「なっ」
突然の愛の言葉に、わたしはたじろいだ。
「……なに、どうしたの」
「ほんとに好きなんだ。いつも全然言えなくてごめん。でも好きなんだ。絶対別れたくない」
めったに愛の言葉を口にしない紘央が今、不器用ながら必死に何かを伝えようとしている。
「だから、おまえがもし俺の側にいてくれるなら、俺はおまえの全部を受け入れる。全部だ」
「……」
「おまえがビッチでも淫乱でも、なんでもいいんだ」
「待って」
話の主旨が見えてきた。わたしは慌てて紘央を制した。
「聞いて、わたしあれからまたセックスしたんだよ。2回もだよ? ビッチ確定でしょこれ」
「……未散」
「お風呂の中でもしたし、夜はつながったまま寝たの。ねえ、耐えられる? こんな話聞いて」
言いながら、説明のつかない苦い涙があふれてきた。
「……めちゃくちゃ、辛い。死ぬほど悔しいよ。けど」
息を吸いこむかすかな音に続けて、紘央は一気に喋った。
「けど、それを聞いても1ミリも別れたいって思わない。それが俺の愛の程度を証明してると思うんだ」
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