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「……なんか、いろいろ思いだすとあれだな。俺たち、ドラマありすぎだな」
俺は感慨をこめて言いながら、ジンジャークッキーをもう一枚手にとった。
「ありすぎですね」
コーヒーを口に運びながら、未散はおかしそうに笑う。その笑顔に、幸福を感じる。
お互いの恋人たちのことをあけすけに話せるようになるまでにはいろいろ葛藤があったが、あるがままの未散を愛しているという実感が持てている今が、幸せだ。
あのとき苦労して手に入れた結婚指輪が未散の指に光るのを見つめているうちに、自然に口が動いた。
「やっぱだめだわ、俺」
「え?」
「今日、おまえとしたい。めっちゃしたい」
この間、ふたりで泊りがけで温水プール施設へ行った。
セックスレス解消をもくろんでいたのに、プールで体力を使い果たしてしまったのか、その夜は未散に爆睡されてしまった。
「……いいよ?」
快諾されて、中学生のように胸が高鳴る。
「じゃあ、23時ベッド集合な」
「御意」
こんな感じで、俺たちはきっとこの先もやっていける。
人生最後のセックスを目指して。
細い月が、窓から俺たちを見下ろしている。
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