第2章 恋人のルール

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水色がかった緑の器が一枚。 バリ原産の板チョコが二枚。 それと、ココナッツオイルの石鹸。 バリ旅行のお土産を持って、(いたる)に逢いに行った。 他の恋人たちにもほぼ同じようなものを買ったけれど、アメリカから帰ってくるたびにかなり豪華なお土産をもらっている至には、気持ち多めに用意した。 器が割れてないか不安だから、この場で開けてみて。 そう頼む前に、至はばりばりと包みを開封し始める。 欧米ではたしか、プレゼントはその場で即開封して御礼を言うのがマナーだ。 帰国子女である至のこういうアメリカナイズされた振る舞いを、わたしは気に入っていた。 「へえ、趣味いいじゃん」 葉っぱに似た形をした器を手に取り、至はしげしげと眺めながら言った。 「ジェンガラケラミックっていうんだって。自分用にもいろいろ買っちゃった」 「ふーん、なんか使うのもったいないな。…あ」 至は急に目を細めて笑う。 「また言っちゃった。『もったいない』って、やっぱ日本人ならではの表現だよな。向こうだと、しっくりくる言葉見つからないからさ」 こんなふうに言語に対してセンシティブなところも、しみじみ好きだと思う。
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