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感情の抜け落ちたような顔。それでも俺の妻は、世界一美しかった。
むしろ、喪失感が彼女の美しさをいっそう際立たせていると言ってもよかった。
未散はそれ以上感想を言うこともなく、ぱらぱらと雑誌をめくると、また窓に額を預けた。
冷たい雨が降りしきる街路をぼんやりと見ている。
俺も隣りに腰を下ろし、未散の髪に触れた。にんにくのにおいが付かないように、そっと。
未散は黙って俺に撫でられていた。
「――ねえ」
窓に顔を向けたまま、未散がつぶやいた。
「ん?」
「あたしたちって、やっぱ変かな」
乾いた声で発せられた言葉だけど、それは未散の切実な内面を伝える問いに思えた。
「普通じゃね?」
俺はさらりと返す。
未散は一瞬俺の顔を見て、また視線を窓の外に移した。
秋の長雨が、降り続いている。
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