第4章 土星のルール

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「菊池くんと付き合うことになりました! 蒔田さんよりず〜っと愛してくれます♡」 ☆美月☆から届いたLINEには、加工アプリで猫耳やひげの付いた若い男女の写真が添えられていた。 はて、菊池とは誰だったであろうか。 「なに? 葛原?」 酒を飲む手を止めてしばらくiPhoneの画面を見つめていた俺に、(かける)がたずねる。 「……や、なんでもない」 ポケットにiPhoneをしまいこみながら、ああ、そういえば告白されたとかなんとか言っていたっけ、とぼんやり思いだす。 でもあれって、去年のGWくらいのことじゃなかっただろうか。菊池とやら、ずいぶん根気よく待ったんだな。 サイパンから帰ってすぐ、俺は彼女たちに予定より早い別れを告げた。電話で。 ゆかりにはぐずぐず言われ続け、どうしても最後ならGWを一緒に過ごすよう懇願されているが、美月は意外にすぐに切り替えてくれたようだ。 ただ、LINEをブロックしたわけじゃないので、こうして時折メッセージは届いてしまう。 それが悩みどころだった。
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