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第1章 夫婦のルール
PCの電源が落ちきると、わたしは少しほっとしてコーヒーを淹れにキッチンへ立った。
文字起こしの在宅ワークを始めたのは紘央と結婚してすぐのことだったので、この冬で丸3年経つことになる。
トライアルとして短い音声データの書き起こしから始め、徐々に議事録やインタビューなどの長いデータを担当するようになった。
在宅ワークと言えば気楽でいいねと思われがちだが、2時間も3時間も聴覚を研ぎ澄まし続けるのはなかなか消耗するものだ。
コーヒーを淹れて、テーブルに運ぶ間も惜しく、わたしは立ったままカップに口をつける。
そして、スマートフォンを取りだした。
ひと仕事終わると、いつも誰かに抱かれたくなる。
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