プロローグ。

14/17
前へ
/163ページ
次へ
 するとハッと気づく。いけない。 課長の事ばかり考えているわ。  何だか胸が締め付けられそうな気持ちになる。 不思議な気分だ。  そんな気持ちを抱きながら翌日。 会社に行き課長を見ると相変わらずの姿だった。  黙々と眉間にシワを寄せてパソコンに打ち込んでいた。  あれは、怒っているのではなくて集中している姿だったのね! これも新しい発見だった。  今日もお茶を出したら喜んでくれるかしら? そう思い席を立った。  給湯室でお湯を沸かしていると誰かが入ってきた。 同じ部署で後輩の澤村梨香さんだった。 「お疲れ様です。あれ?それ、課長にですか?」 「えぇ、せっかくだから」  そう言いながらお茶を湯のみに注ぎ終わると 急須を片付けた。  するとそれを見て不思議に思ったのか 「松井先輩ってマメですよねぇ~?  怖くないんですか?課長のこと」と私に聞いてきた。 「確かに怖いわね。 でも、悪い人じゃないわ」  私も以前は、そう思っていたけど ただ真面目で不器用な人ってだけだ。  昨日話してそう感じた。そして意外と照れる姿が可愛い。  「そうですかね?私は、あぁ言う人って 何考えてるか分からないから怖くて。  それに何だか松井先輩って課長の事よく分かってるんですね?どうしてですか?」  澤村さんがそう質問してきた。 ギクッと肩が震えた。そ、それは……。 「そう?勤めが長いから何となく分かるのよ」 「ふ~ん。そう言うもんですかね? 私には、よく分からないかも」  不思議そうに首を傾げると冷蔵庫から 自分の飲み物を取り出して行ってしまう。  行ったのを確認するとハァッ…と息を吐いた。 バレるかと思った…。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5055人が本棚に入れています
本棚に追加