プロローグ。

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「もう文句ばかり言わない!! とにかくお見合いだけでもしなさい。いいわね?」 ビシッと母に言い返されてしまった。  いくら嫌だと言っても聞いてもらえず 結局会うはめになってしまった。最悪だ…。  こんなの会社の人にも課長にも知られたくない事実。  あぁどうしたら、このお見合いをやめる事が出来るのだろうか?  しかし、結局何も出来ないままお見合い当日に なってしまった。  私は、母に無理やり着物を着せられる。 苦しいし…気分まで沈む。帰りたい…今すぐにでも 「いい?亜季。相手が上司なら なおさら失礼のないようにね」  失礼だと思われたくないなら やめさせて欲しいぐらいだわ。  豪華な料亭の一室に案内され私と両親は、 待つ事になった。  さすが料亭なだけあって風流で素敵だわ。 庭園もお洒落だし、きちんと手入れされている。  お見合いじゃなければ、どんなにいい所か……。 「失礼致します。 お連れ様がお見えになりました」 そして案内された人は、間違いなく櫻井課長だった。  ビシッとスーツ姿でキメているが、ムスッとしていて相変わらず怖い。  思わず会社に居る時の事を思い出し背筋が伸びた。 「まぁ、なんて綺麗なお嬢さんかしら。 はじめまして。智和の母の和美です」  ニコッと挨拶してくれる課長のお母様は、 上品で優しそうな感じの人だった。  課長は、お父様似なのかしら? 「は、はじめまして。松井亜季と言います。 よろしくお願い致します」 「…櫻井智和だ。こちらこそ、よろしくお願い致します」  お互いに頭を下げて挨拶をするが、その声がいつもより低く怖い。  もしかして機嫌悪くさせてしまったのだろうか?  親同士は、何やら会話を始める。 チラッと見ると思いっ切りガン見されていた。 怖くて前が向けない……。  私は、ガクガク震える身体を必死で落ち着かせようとする。 「亜季さんのご趣味は、何かしら?」
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