プロローグ。

5/17
前へ
/163ページ
次へ
「…何故謝るんだ?」  何故って…。こんな気まずい上に私がお見合い相手だからです。  課長だって選ぶなら美人で清楚な人がいいだろう。 自分では不釣り合いだ。 「私がお見合い相手だからです。 ガッカリされたのは、承知しています。  だからその…申し訳ありませんでした!!」 深々ともう一度頭を下げた。  何故そんなに頭を下げて謝るのかは、自分でも 分からない。  ただ…気まずいやら怖いやらで 何とか課長の機嫌を損ねたくなかった。  櫻井課長は、そのまま黙り込んだ。 もしかして怒っている?  それとも呆れて口に出して言えないのだろうか? 「…松井」 「は、はい」  名前を呼ばれ思わず返事した。 全身ビクビクして震えていた。怒られる!!  すると課長は、私の腕を掴まえて そのまま料亭の壁際まで連れて行かれる。 えぇっ!? すると勢いよく壁ドンをしてきた。ひぃぃっ~!!  普通よく漫画やテレビで観る壁ドンって 胸キュンしたりドキドキするものじゃないの?  今の私には、胸キュンより恐怖が優先していた。 これだと逃げることも出来ない。  怖い……誰か助けて!! 思わず目をつぶりガタガタと震える。すると 「お前は、そんなに俺が怖いか?」 「えっ?」  恐る恐る目を開けて課長を見ると 切なそうな表情で私を見ていた。 「櫻井課長…?」
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5061人が本棚に入れています
本棚に追加