悪い噂。

3/17

5042人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
「だ、大丈夫です。 まだ少し痛みますが……その……歩けますし」  心配されるほど大げさなものじゃない。 多分……大丈夫。会社に行けるはずだ。  そのことに話をふれてきたので恥ずかしくなった。 「無理しない方がいい。お前は、有休がたくさんあるんだから休め」 「ですが……」 「そうなったのは、俺が原因だ! 気を遣わなくてもいい。今日1日ゆっくり休んでいろ」  課長にそう言われると休まないといけない気がする。 申し訳ない気持ちもあるけど……正直助かったわ。 「あの……ありがとうございます」 「いや、お礼を言われるような事は、何もしていないし……」 少し困った様子で言う課長に苦笑いした。  そして朝食が終わると課長は、仕事に行く身支度をしていた。  いつもの姿だ。スーツ姿の課長は、よく似合うと思った。 「あ、そうだ。これをお前に渡しておく」 「これは……」 「家の合い鍵だ。そのまま持っててくれ。 俺は、行くけど……自由に出入りしていいから」  嬉しい……。課長の自宅の合い鍵を貰う事が出来た。 これで課長と恋人同士になれたのね!  私は、その鍵を大事そうに受け取った。 「じゃあ、行ってくる」 「行ってらっしゃい」  まるで夫婦みたいな会話だ。 課長を見送ると鼻歌を歌いながら食べた食器を洗う。  まだ身体は、ダルいけど……幸せの痛み。 平気だ。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5042人が本棚に入れています
本棚に追加