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「うむ……ありがとう」
こちらを見ずにお礼だけ言われる。無愛想に。
えっ?……それだけ?
もう少し笑ってくれるか、こちらを見てくれると思ったのに。
やっぱり。昨日の姿は、幻だったのだろうか?
残念な気持ちになった。
頭を下げ戻るとすぐに課長は、別の社員を呼びつける。
いつもの説教風景が始まった。
湯のみを自分のデスクに持って行き美奈子に渡した。
「ありがとう。
お疲れ様~怖かったでしょ?」
「…うん」
からかうように言われ苦笑いする。
そしてチラッと課長を見るといつもの怖い姿だった。
お見合いで言った事…何だったのだろうか?
せっかく少し見直したのにな。
嫌で嫌で仕方がなかったお見合いなのに
何だか昨日に戻って欲しくなった。
もう見られないのかな?課長の照れた顔……。
しゅんと落ち込みながら仕事に戻った。
昼休みになると今日は、美奈子とランチを済ませ
私だけお手洗いに向かった。
用を済ませ戻る時、向こうから歩いて来る
櫻井課長の姿が見えた。あ、課長…。
何だか気まずくなり頭を下げると戻ろうとする。
そうしたら「松井!」と私の苗字を呼んできた。
「えっ?」
私のことだよね?振り向くと私を見ていた。
思わず心臓がドキッと高鳴った。
まさか呼び止められると思わなかったから驚いてしまった。
「さっきのお茶……美味しかった。悪かったな。
社内で馴れ馴れしいのも嫌だと思ったから」
……えっ?もしかして気にしてくれたの?
課長を見ると少し恥ずかしそうにしていた。
あ…照れてる。
何だか胸がポカポカして温かくなってきた。
「いえ…お気遣いありがとうございます」
「それで…今夜予定が無いなら一緒に食事でもどうだろうか?」
「……えっ!?」
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