善悪と、優先順位。

2/34
506人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
 医大を卒業し、附属の大学病院の研修も2年目を半年過ぎ、残すローテートは脳外科と救命のみとなった。  今日から、大本命の脳外研修。  何故脳外希望なのかというと、『なんとなく響きがカッコイイから』というそれだけの理由。  医者になったのも何となく。父親が地元のクリニックで内科医をしていて、特になりたいものもなかったし、同じ医師になれば、親も喜ぶだろうと思って、なった。実際、両親は大喜びだったし。  ただ、医大はなんとなくでは入れなかった。めちゃくちゃ勉強した。医大に入る為というよりは、『医者の息子なのだから勉強が出来て当然』という、周囲から発せられる空気により、物心が付いた頃から人並み以上にせざるを得なかった。  『優秀でいなければならない』という強迫観念からの勉強は、最初のうちはしんどいものだったが、親や先生や友達に『すごいね』などと言われるのが次第に快感に変わっていき、段々と勉強が苦ではなくなっていった。  そう、オレは基本的に凄く単純な人間なのだ。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!