頑張った人には、ご褒美を。

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 「…木南先生が、なんでここに?」  何となく、2人の方へ行ってはいけない様な気がして、隠れる必要もないのに、曲がりかけた角に身体を引っ込めた。  「アレ? 柴田くん? なんでここに?」  そんなオレを、去年小児科ローテのオーベンだった平沢先生が見つけ、木南先生が小児科にいることを不思議に思っているオレを、更に不思議がった。  「あ、お疲れ様です。私、今脳外ローテ中なんですけど、そこで山本蓮くんのMRIを見せてもらった事があって…今日、亡くなったと伺ったので。…あの、どうして木南先生がここにいるのでしょうか?」  平沢先生の疑問を解明したので、今度は自分の質問を問い返す。  「あぁ。2週間前くらいに、『蓮くんのご両親と話をさせてくれないか』って小児科に尋ねてきたんだよ、木南先生。オレたちも山本さんに『オペは難しい。強い薬をやめて体力を回復させて、残りの時間を過ごさせてあげた方が良い』って何度も説得したんだけどさ、『蓮を見放さないでください。助けてください』ってなかなか受け入れてもらえなくてさ。まぁ、当然だよね。我が子の命を諦める決断なんて、簡単に出来るはずがないよね。  …柴田くん、木南先生の昔の話、聞いてたりする?」  噂話を吹聴し拡散するようなタイプではない平沢先生が、木南先生の息子さんの話を『昔の話』と濁してオレに探りを入れた。おそらく、オレが知らなかった場合、話し方を変えようと思っているのだろう。
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