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「このファイルにある書類とデータは全部USBメモリに入ってるから。それから午後からクライアントとのミーティングがあるのは伝えたっけ……」
「大丈夫です。昨日聞きました」
「そうか、良かった。バタバタしてて記憶が曖昧で申し訳ない。そこで市川さんの紹介もするから」
「ありがとうございます」
急な人事異動で七瀬さんも大変なのだろう。前任のコンサルタントは優秀であることはその仕事の成果からわかる。
が、理由にもよるが急に退職するなんて責任感を感じられない。まあ会うこともないので気にすることもないが。
それから駆け足で業務内容と進捗状況を説明されると部屋を出た。
七瀬さんに気づかれないように息を吐く。
ほとんど呼吸をしていなかったかもしれない。
用意された私のデスクは加藤さんの隣だった。
コンサルタントはアナリストが収集したデータやアイディアを元に計画を立てていくので加藤さんとはいわばパートナーだ。
「午後はよろしくお願いします」
私が改めてそう言うと加藤さんは「はーい」と面倒臭そうに答えた。大丈夫だろうかと一抹の不安を抱えながら午後を迎えた。
けれど、私の心配は取り越し苦労だったようだ。
加藤さんは仕事はきっちり、いやそれ以上にやるタイプだった。
クライアントへのインタビューでは意見もバンバン出すし、何より目の付け所がいい。
私ほどではないが。
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