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「差し出がましいようですが……もし今日のお弁当がお口に合うようでしたら、これから奥様が戻られるまでの間、毎日作ってきてもよろしいでしょうか?」
「え……それは流石に迷惑じゃ……」
「私は七瀬さんの部下です。上司に倒れられては困りますので。お返事は食べた後に」
「じゃあ……そうするよ」
「お弁当は七瀬さんのデスクの横にあとで掛けておきます。では業務に戻ります」
私はそう言うと先に部屋から出た。
と、同時に肺に目一杯空気を吸い込み、それから右手の拳をグッと握りしめた。
市川莉緒。七瀬さんの胃袋をこの手に掴みます!
それからお昼休みが終わるまで、余計なことを考えないように仕事に没頭した。
「ふう」
定時を過ぎ、ひと息つこうと執務室に設置されているコーヒーメーカーへ足を向けると、丁度七瀬さんもコーヒーをカップに注いでいるところだった。
「お疲れ様。市川さんのも入れるよ」
「すみません。ありがとうございます」
そう言ってから執務室を見ると、津田さんの姿しか見えなかった。
「お弁当、すごく美味しかった」
カップを手渡しながら七瀬さんが小声で言ってきた。
「お粗末様でした」
「とんでもない。久しぶりに家庭の味を思い出したよ。ありがとう」
「それは……よかったです。捨てるところだったので」
「洗って明日返そうかと思ったけど明日も使うよね」
「はい。私のデスクに置いておいてください」
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