4.乙女よ、胃袋を掴め

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 七瀬さんは「わかった」と言ってから言葉を続けた。 「返事なんだけど」 「は、はい」 「料金を支払うよ。それなら僕も遠慮なく受け取れる」 「そんなの私が受け取れません」 「いや、あれはそのくらいの価値があるよ」  そんな押し問答を繰り返していると「戻りましたー」とジェイと加藤さんが執務室に入ってきた。どうやら夕食に出かけていたらしい。 「じゃあそういうことで」  2人に聞こえないように私の耳の傍で囁くように言うと、七瀬さんはカップを持ってデスクに戻っていった。 「…………」  耳が熱い。 「市川さん、なんか顔赤くないですか?」  私もデスクに戻ると、加藤さんが私の顔色の変化を目敏(めざと)く指摘してきた。 「チークを塗りすぎたのかもしれません」 「ふうん」  (いぶか)しげに見てくる加藤さんの視線に耐えきれずにいると、七瀬さんが紙袋を2つ持って私の所へやって来た。  ひとつは私が渡した弁当の入った紙袋、もうひとつは菓子折りが入っていそうだった。ここで返されるとまた加藤さんが大騒ぎしそうだと危惧したが七瀬さんは 「忘れてた。これ、今日林から貰ってたんだ。明日皆に配ってくれないかな? こっちは横浜の方に置き忘れた私物だって言ってたよ」  そう言って私に目配せしてきた。     
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