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「七瀬さんらしいな」
「あと……可愛いと言われました……」
私が頬を染めて言うと山崎さんはじっと私の顔を見た。
「なんですか、その疑いの眼差しは。妄想じゃありませんから。酔っ払った私が可愛く見えたらしいです。実際はアルコールではなく、七瀬さんの魅力に酔っていたのですが結果オーライです」
「ほらな。言ったろ、隙見せろって」
「そんなつもりはなかったにしろ、確かにその通りでしたね」
私が缶のプルタブを引き上げると、山崎さんが自分の缶を軽く当ててきた。
「次はそうだな。一緒に昼飯を食べろ」
「お互いお弁当なら執務室で頂くことになるかと思いますが」
「まあそれでもいい。無言で食べるなよ? ちゃんと会話しろ」
「食事の時は黙って食べろと教わって育ったのですが」
「折角のチャンスを棒に振る気か、おまえは」
「嫌です。ちゃんと会話します。努力します」
「七瀬さんのこととなるとホント素直だな、おまえって」
確かにその通りなのだが、それだけではない。
「山崎さんの言うことを少なからず信頼していますから」
顔以外、口も態度も悪いし、この男がやった事はとても褒められたものではない。
けれど、この男がいなければ私は自分を変えることは出来なかった。
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