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きっと一生妄想の世界で生きていた。
「なんだよ。調子狂うな」
そう言ってガシガシと髪を掻いて照れるので、こちらの調子も狂う。
私たちは無言で同時に缶に口を付けた。
「ところで由美さん以外にまともな恋人はいなかったんですか?」
「あー。学生の頃は特定の彼女いたけど、就職してからはいないわ。激務だったし、女って少しでもないがしろにすると機嫌悪くするからな。面倒くさくなった。だから適当に遊んでる方が楽」
「うわ。分かってはいましたが最低ですね」
「信頼してたんじゃないのかよ」
「それとこれとは話は別です。それにきちんとした恋人がいれば現在こんな事にはなっていなかったのでは」
私がそう言うと山崎さんは「そうかもな」と笑った。
その笑顔がとても寂しそうに見えた。
「もしかして……こんないい加減な恋愛をしているのは何か理由があるんじゃないですか?」
「ないよ。おまえが思う通りの最低な男だよ、俺は。忘れたのか?」
確かに最低なこともされた。
けれど、どうしても腑に落ちない部分があるのは不誠実に見えて誠実な部分も垣間見えるからだ。
「忘れてません。でも何かあるなら私でも話を聞くことは出来ます」
「俺のことはいいんだよ。おまえは自分のことだけ考えてろ」
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