5.君の目は

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「まあおまえの料理はお世辞なしで美味いからな。七瀬さんでなくても胃袋を掴むのは容易いだろう」 「そ、そうでしょうか」 「だが、それだけではただの“おかん”だ」 「お、おかん! それは母親的な意味でしょうか。あんな息子がいたらさぞや幸せでしょうね」 「おまえが七瀬さんを産めるだけの遺伝子を持っているとは思えないがな。おかんから女に昇格するには色気が必須だ」 「色気……」  私の頭の中はモザイクでいっぱいになった。経験不足の為細部までは想像出来ないが、なんとなく恥ずかしい。 「いくら見た目がまともになっても、料理が上手くても、女を――つまり色気を感じなければ恋愛対象にはならない。ってなんで顔赤いんだよ」 「な、なんでもないです。ですが色気というものは元々備わっている人間とそうでない人間がいるのではないでしょうか」 「別におまえが考えているようなことでなくても色気は出せる。例えば――」  唐突に腕を掴まれ、じっと見つめられた。  私はゴクリと生唾を飲んで「そういうことはもうしないと……!」と左腕を振り上げた。 「待て待て。何にもしないから。おまえはただ俺を七瀬さんだと思って見つめるだけでいい。目を合わせるだけだと恨めしそうに思われたんだろ? 今度は気持ちを込めてみろ」 「は……? そんなの無理で……」 「やれ。俺も好きな人を想っておまえを見るから」 「え……」     
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