5.君の目は

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 午後はクライアントへ出向いてのプレゼンを行う為、全員でオフィスを後にした。  しかし、暑い。  まだ初夏だというのにこれでは真夏が思いやられる。  というのも私は夏が苦手なのだ。冬生まれだからだろうか。毎年熱中症を起こしているような気がする。そして今日も結構まずい。さっきから頭痛が酷くて吐き気がする。 「市川さん、どうした? ……顔色が悪いな」  無事にプレゼンを終え、もう少しでオフィス。という場所を皆から少し後からついていく形で歩いていると、それに気づいた七瀬さんが後ろを振り向き声を掛けて来てくれた。 「すみません……暑くて……」 「もしかして熱中症かもしれないな。今日はもう帰ったほうがいい」  本当はこの後オフィスへ戻って今日のプレゼンの結果をまとめたかったのだが、吐き気とともに冷や汗が背中を伝っていて正直立っているのもやっとだ。 「申し訳ありません。……では今日はここで失礼しま……」  最後まで言い終える前に目眩がして地面に膝をついてしまった。正確には完全に着く前に七瀬さんに腕を取られたのだが。 「僕が送る。皆、先に戻っていてくれ」  少し先を歩いていた3人が顔面蒼白の私を見て駆け寄って来た。 「私が送りますよ」     
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