5.君の目は

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「加藤さんは戻ってやることがあるだろう。それに女性が病人を運ぶのは困難だよ」  そう言って七瀬さんは私の肩を抱くようにして支えてくれた。  熱い。  いや、暑い?  もはや違いがわからないが、私のCPUは熱暴走を起こしてしまいそうだった。 「仕方ないですね……今回は我慢します。市川さん、早く元気になってくださいよ」 「莉緒、お大事にね」 「しっかり休むといい」 「すみません……」  3人からの言葉に私が力なく頷くと、七瀬さんは近くの公園のベンチまで私を連れて行って座らせてくれた。  ここは木陰になっていて幾分涼しく、呼吸も楽だ。 「ひゃ……」 「ごめん、冷たすぎたかな」  七瀬さんが自分のハンカチをどこかで水に濡らして来てくれて私のおでこに当ててくれた。 「これも少しづつ飲んで。一気には飲まないで」  手渡されたペットボトルは経口補水液だった。  言われた通りに口内を湿らせる程度に口に含ませる。 「すみません……ご迷惑をお掛けしました」  七瀬さんは私の隣に腰を下ろし「迷惑なんて思ってないよ。まだ気分悪いだろう。暫く何も話さなくていいから」と優しく言ってくれた。  好きだなあ。と改めて思った。  由美さんは何故こんなに優しい人を裏切ったのだろう。  私なら絶対に裏切らない。     
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