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「そのお堅い感じですよ。真面目が服着て歩いてるって感じ」
「……ずっとこうやって生きてきてるので。それに真面目なのが悪い事とは思いませんが」
私がそう答えると加藤さんは「市川さん、彼氏いないでしょ」と唐突な質問を投げかけてきた。
「なっなんですか、いきなり」
この部屋には私たち以外に男性が3人もいるのだ。当然、七瀬さんもいる。
私は冷や汗をかきながら小声で抗議したが加藤さんはそんな私を別段気にすることもなく「別にー。モテないだろうなあって思っただけです」と言い放った。
カチンと来たが、言い返す言葉が見つからない。
「ま、その方が私には好都合ですけど」
そう言って、加藤さんは七瀬さんに視線を向けた。つまり、彼女は七瀬さんに好意を持っていて、女性である私が入ってきて面白くなかったけれど、お世辞にも男性から興味をもたれないであろう私はライバルにもならないから好都合、そういうことだろう。
残念だが、やはり加藤さんとは仲良くはなれそうもないと肩を落とした。
2時間ほどの残業をして外に出ると雨が降っていた。
そういえば明日から本格的な梅雨に入るとか天気予報で言っていたのを思い出す。
私は鞄に常備している折りたたみ傘を出すと夜道を駅に向かって歩き出した。
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