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出来ればマンションの人間とバッタリ会って助けを求めたかったが、こんな時に限って誰1人として出会わないまま自宅の玄関の廊下へ2人して雪崩れ込んだ。
「……う」
人生初、大人の男性の体の重みに下敷きになったというのに色気など皆無。なんだか泣きたくなりながら必死に抜け出す。
「とりあえず着替えをしてください」
たまに遊びに来る両親の為にスウェットと、防犯用に使っている男性物の下着なら用意があると思いタンスから防虫剤の匂いの染み込んだものを傍らに置いてみるも、男性は浅い呼吸を繰り返すだけで動かない。
「ああ! もう!」
これは人命救助だ。
恥ずかしがっている場合ではない。
そう意を決して廊下に灯る電気を消した。
暗闇が視界を支配する。
困った。何にも見えない。
それでも暫くすると目が慣れて来てシルエットくらいなら確認できるようになった。
「し、失礼します」
水分をたっぷりと含んだスーツとワイシャツをなんとか脱がし、出来るだけ丁寧にタオルで体を拭いていく。
その熱さに私は肝を冷やした。
「大丈夫です。何にも見えてません」
誰に断りをいれているのかわからないが、私はそう言って下着に一気に手を掛けた。
これは人形、これはレスキュー。
頭の中で繰り返しながらなんとか着替えを済ませ、ベッドルームへ引きずりながら男性を移動させる。
「せーの!」
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