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「そうですね。頂きます」
鞄をデスクの下に置き、ジャケットを椅子の背もたれに掛けるとラップトップパソコンの電源を入れた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
いつもは軽く朝食を摂ってから出社するのだが、今日はそんな悠長なことはしていられなかったので熱いコーヒーが空の胃に染み渡る。
「何か」
そんな私を加藤さんがじっとみて、それからため息を吐いた。
「山崎さん本当に辞めちゃったんだなって思って」
「山崎さんという方だったのですね」
「愛花は葵と仲良かったからね」
ジェイがニコニコとしながら補足情報を加えてくれた。
「葵さん……ということは女性ですか?」
「ああ、葵という名前は女性にも多いからね。でも山崎葵は男性だよ」
私は特に気にすることもなく「そうですか」と答えるとパソコンに向き合った。
「おはよう。何3人で話してるんだ?」
そこへ津田さんと一緒に七瀬さんが出社してきた。
私はなるべく七瀬さんを見ないようにして口を開いた。
「私の前任の……」
「なんでもないですよ。今日も雨で鬱陶しいって話してたんです」
加藤さんが私の言葉を遮るようにして答えた。
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