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七瀬さんに聞かれてまずい事など話していたとは思わないが、加藤さんが睨んでいるのでそれ以上は何も言えなかった。
考えたところで答えは出ないので特に気にすることなく仕事に集中した。
そして、午前中の業務はあっという間に終わった昼休み。
「焦ったー。七瀬さんに山崎さんの話は禁句なんです。覚えておいてください」
自動販売機とテーブルが置いてある休憩所で買ってきたサンドイッチを食べようとすると、加藤さんに突然腕を掴まれ小声でそう忠告を受けた。
「何故?」
「聞きたいですか?」
話したくてうずうずしている加藤さんに「特には」と返すと、加藤さんは思い切り頬を膨らませた。
つまり、聞いてほしいということだろう。
「不倫ですよ」
結局、私は加藤さんに人気のない屋上の扉の前まで連れられてきた。
「不倫? 誰と誰がですか?」
「七瀬さんの奥さんと、山崎さんに決まってるじゃないですか」
何がどう決まっているのかわからないが、なるほど。
だから七瀬さんの耳には入れたくないと――って、今“七瀬さんの奥さん”って言いました?
少なからずショックを受けてしまい、目が泳いでしまう。
「ああ……そうですね。あんな素敵な方なら奥さんの1人や2人……」
「いや、2人いたらダメでしょ。意外と面白いな」
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