1.イケメン拾いました

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 頬にあった指が顎先に触れ、そのまま上を向かされた。  ぶつかる視線。  2人の瞳には、もうお互いの姿しか映っていなかった。 「七瀬さん……」 「蓮。と呼んでくれないか」 「……蓮さん」 「莉緒……」  お父さん、お母さん。莉緒はついに大人の階段を登ります―― 「何やってんですか」  デスクに突っ伏し、悶絶している私へ横から加藤さんの冷たい声が浴びせられた。  しまった。またうっかり妄想してしまった。 「……いえ、昨日少しばかり眠れなかったので、居眠りです。失礼しました」  コホン、と咳払いをひとつして、何事も無かったかのようにパソコンのキーボードを叩き始めた。  仕事が一段落ついたのは、奇しくも妄想した時と同じ深夜10時だった。  だが、実際は加藤さん以外は全員残っていたし、あのような出来事が起こるはずもなく本日の業務を終えた。  ビルから出ると、未だに雨が降り続いていた。  傘を差したところで「市川さん」と背後から七瀬さんに呼び止められた。 「お疲れ様です」  先程の妄想のせいでまともに顔を見ることが出来ず、傘で顔を隠した。  声までいいとか、もはや反則。  これだけで、ご飯3杯余裕です。     
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