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それに、山崎葵がほとんどシステムを構築してくれていたので検証作業だけで済みそうだ。という言葉を寸でのところで飲み込んだ。
「それに?」
「いえ……その、楽しいので。この仕事が」
「それは良かった」
危ないところだった。
「大学卒業後にアメリカに留学してたんだよね?」
「あ、はい。2年ほど」
「僕もそうなんだ。市川さんとは色々と話が出来そうで楽しみだよ」
色々――とは?
それは、業務以外の会話も私としたい、そういう意味でしょうか!
「勿論。君とはプライベートでも親睦を深めたいと思っているよ」
いつの間にか電車は横浜方面ではなく、羽田空港方面へ向かっていた。
「初めて君を見た時から感じていたんだ。君は僕の運命の人だと」
そう言って七瀬さんはつり革から手を離し、その手を私の手に繋いだ。
「な、七瀬さん……実は私も……」
このまま、どこか異国の地へふたりで行くのも悪くない。
だって私たちは運命の赤い糸で繋がれているのだから――。
「……どこへ行きましょうか」
「どこか飲みにでも行きたかったか? でも今日はもう遅いな。ちゃんと歓迎会を考えているから来週あたり皆で行こう」
ハッと意識を戻すと車窓には川崎駅付近の景色が流れていた。
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