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それは、お父さんのスウェットを着たイケメンだった。
「な、な、な……なんでまだいるんですか!」
玄関のドアにバン! と音を立てて背中を張り付けた。
「んー、まだ微熱があるんだよね。それに俺行くところないし?」
確かに体調が良くなったら出ていってくれとは言ったが、知らない人間の家でよく1日過ごせたな。と妙な部分で感心してしまった。
「行くところがないって……冗談はやめてください」
スーツを着ていたところを見るとサラリーマンであることは明白。帰る家がないなんて冗談に決まっている。
だが、次に彼は信じ難いことを言ってのけた。
「会社クビになっちゃってさ。現在、住所不定無職なわけ。だから暫くここに置いてよ」
住所不定無職。
つまり、住む家がなく、仕事もしていないということ?
「……冗談じゃない」
「だから、冗談じゃないって」
何故私が得体の知れないイケメンの面倒を見なければならないのだ。
「冗談じゃないのは分かりました。けど、得体の知れない人間と住むことは出来ません。どうぞ他を当たってください」
深々と頭を下げるとイケメンは
「山崎葵」
と名乗った。
「……は?」
「だから、俺の名前なんだけど。他に何が知りたい?」
「いやいや、ご冗談を」
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